JLCS ニュースレター No.11. News Letter発行のお知らせ2. 2003年虹彩賞、Goodby賞受賞者のご紹介
2. 2003年虹彩賞、Goodby賞受賞者のご紹介
10月14日から17日まで青森で液晶討論会が開催され、若手研究者のポスター発表の中から下記の方々が虹彩賞を受賞されました。また、今年はHull大学のJ. W. Goodby先生が講演のために来日されたことから、特別にGoodby賞が設けられ、下記の方が彼の液晶テクスチャーアートを贈呈されました。おめでとうございました。受賞された方々の研究と受賞の感想をご紹介いたします。
虹彩賞
大田康之さん(長岡技術科学大学工学部)
受賞論文 PA02
題目 液晶配向用表面レリーフグレーティング上の方位角アンカリング強度測定
概要
虹彩賞
原田晴夫さん(大阪府立大学)
受賞論文 PA23
題目 等方相中のスメクティックA液晶ドメインの電界印加効果
概要
等方相中のスメクティックA相と生体膜は分子配列が層構造を有するためマクロなスケールでも類似の形態を呈する。この類似性は電界応答においても見出されると期待される。生体膜の電界応答の制御は重要な技術であるため、その機構に関する理解を深めるためにもスメクティックA相の電界応答を調べることは重要な課題である。本報告において、等方相中のスメクティックA相に電界を印加することにより、生体膜の電界応答と類似の現象を見出した。液晶セル基板面に対して平行方向に電界を印加すると、スメクティックAドメインは電界方向と平行方向に数珠状のドメインを形成することを見出した。これはYeast cellsにおいても観測されるパールチェーンフォーメーションと類似の現象である。また、基板面に対して垂直方向に電界を印加すると、スメクティックAドメインのある部分から突き出した変形が見られる。これは電界印加時のリポソームの動的変形と類似の現象である。一方生体膜と類似の現象に加え、スメクティックA相に固有の多角変形や回転現象等の興味深い現象も見出した。以上のように、スメクティックA相の電界応答を実験的に明らかにし生体膜の電界応答において、類似の現象を見出すことができた。 |
感想 直接応用につながらない発表にもかかわらず虹彩賞に選んでいただき、光栄に存じます。初参加で受賞できたことは自信にもなりました。生体膜とスメクティックA液晶は分子配列が層構造を有するためマクロなスケールでみて類似の形態を呈します。この類似性は電界応答においても見出されるだろうと考え実験観察を行いましたが、生体膜と類似の出現に加え、スメクティックA相に固有の多角変形や回転現象等の興味深い現象も見出しました。今後はこれらの現象の理解に努めていきたいと思います。 |
虹彩賞
籔内一博さん(東京大学)
受賞論文 PB17
題目 ディスコチック液晶と低分子ゲル化剤の複合系における相分離構造と機能
概要
低分子ゲル化剤は、溶媒中で繊維状の分子集合体からなるネットワークを形成することでゲルを形成する。当研究室では、ゲル化の溶媒として液晶を用いると、液晶の異方性や動的特性を反映した機能性分子複合材料である「液晶ゲル」が得られることを既に報告している。この液晶ゲルの性質は、液晶とゲル化剤の繊維状分子集合体が形成する相分離構造に大きく左右されるため、構成成分の選択が重要である。本研究では、ホール移動により光導電性を示すディスコチック液晶であるトリフェニレン誘導体と当研究室で開発した芳香族ウレアおよびアミド型ゲル化剤からなる複合体を作製した。その相分離構造を偏光顕微鏡や電子顕微鏡観察により調べたところ、ゲル化剤のコアの芳香環や水素結合部位の構造により、様々な構造が得られることがわかった。例えば、ピリジンコアのアミド型ゲル化剤は写真に示すような繊維状集合体のネットワークを形成する。また、ディスコチック液晶のカラム中における分子のスタッキングの秩序もゲル化剤により異なることがX線回折測定より示された。これらの相分離構造が、得られた複合体のホール輸送特性に与える影響を考察した。 |
感想 内容、デザインともに優れたポスターが数多くある中で、今回虹彩賞をいただけたことは、大変光栄です。全く予想していなかった事態(!)でしたので、受賞を知らされた時は喜ぶ前に驚きでした。そして、懇親会で池田先生よりスピーチのご指名を受けた時に2度目の驚き(心の準備ができておりませんでしたので…)。驚いてばかりもいられませんので、今度は皆様を驚かせるような研究成果を出せるよう頑張っていきたいと思います。 |
虹彩賞
山口章久さん(弘前大学)
受賞論文 PB23
題目 新規λ型液晶の分子構造と相転移挙動
概要
虹彩賞
内田江美さん(姫路大学)
受賞論文 PD10
題目 アゾベンゼン含有高分子液晶フィルムの安定な偏光ホログラム
概要
これまで、アゾベンゼンは光によって分子配向を制御できる材料として多く研究されてきた。良く知られている従来の光配向プロセスは、直線偏光の照射のよるアゾベンゼンの軸選択的なE-Z異性化に基づいている。 本研究では、新しい光配向プロセスとして非共鳴領域光であるHe-Neレーザー(633nm)を用いたアゾベンゼン含有高分子液晶薄膜の異なる波長の光照射による光配向挙動について検討した。即ち、無偏光 365nm光によりZ体を形成し、その後の直線偏光He-NeレーザーによるZ体の軸選択的光反応と続く熱処理によって照射の偏光電界に平行方向に高度な一軸配向を得た。この光配向ではほとんど吸収のない633nm光を用いているため、薄膜全体で反応がおきるので従来の光配向に比べ配向度は高くなり、厚膜でも配向が誘起できた。また、偏光電界に平行に配向させることができるため照射角度を変えることにより三次元的な配向も誘起できた。 さらに、この配向プロセスを用いて、He-Neレーザーによる偏光ホログラフィーを行ったところ、初めて室温で安定な“純粋な”偏光回折格子が得られた。この回折格子は、表面凹凸形成がなく、高い1次回折光効率(30%以上)を示し、書き換えが可能であった。 |
感想 昨年のポスター発表では勉強不足な面があることがよくわかりました。そしてこの一年間、素晴らしい研究をすることができ、また内容も理解することができました。この度、この研究成果がうまく伝えることができるか不安でしたが、虹彩賞という素晴らしい賞を頂くことができ、皆様に理解して頂けたということでとてもうれしく思っております。このことが自信にも繋がり、さらに頑張っていきたいと思っています。 |
J. W. Goodby賞
山内貴恵さん(京都大学工学部)
受賞論文 PB15
題目 長鎖を有するビリン錯体の合成
概要