[JLCS-Information:0189] ソフトマターフォーラム講演会「液晶の変調構造 成因と応用」3月10日 アブストラクト
液晶学会ソフトマターフォーラム第17回講演会
「液晶の変調構造 成因と応用」
開催日時: 2018年3月10日(土)14:00-17:25
開催場所:東陽テクニカ本社8F 第1セミナー室 http://www.toyo.co.jp/company/access/
共催: 液晶物理・物性研究フォーラム,分子配向エレクトロクニス研究フォーラム,ソフトマター研究会
内容紹介ホームページ: https://jlcs.jp/forum/soft/soft_20180310.pdf
【講演会参加費】
(一般)
正会員 :3,000 円
非会員 :5,000 円
(学生)
学生会員 :無料
学生非会員:1,000 円
※『賛助会員』は、一口につき5名まで正会員の参加費にて参加していただけます。
なお、『賛助会員』の一覧は、下記でご覧いただけます。
https://jlcs.jp/about/overview/CorporateMembers
※協賛学会員は正会員の参加費、協賛学会員の学生は学生会員の参加費にて参加していただけます。
※参加費は全て消費税込です。
懇親会: 一般:3,500円、 学生:500円(要事前予約)
※懇親会参加費は全て消費税込です。
申込方法: お名前、ご所属、会員・非会員・学生の、別懇親会参加・不参加を明記の
うえ、hasegawa.ryuuichi.ms@m-chemical.co.jpにお申込みください。講演会は当日参加歓
迎します。(懇親会は参加事前登録下さい)
問合せ先:日本液晶学会ソフトマターフォーラム主査 長谷川龍一(hasegawa.ryuuichi.ms@m-chemical.co.jp)
テーマ:
昨年、弘前での液晶学会会期中のミニシンポジウムでは、“立方対称性と内包されるね
じれ-種々の物質系に現れる光学等方な不思議な液晶超構造分子構造とその物理的成因を
議論する-”を議論してきました。今回はその続編と位置付けた講演会を、ソフトマター
フォーラム主催で開催致します。
【立方対称性】とは、結晶にみられるFCC,BCCに代表されるように、規則構造の空間群の中
で液体に次ぐ高い対称性である。一方で液晶相には、一様な層状構造の変調構造としての
キュービック相が存在する。また、ブルー相I,IIのように、層構造は持たないがらせん構
造が空間的に変調された結果、立方対称性が発現する。このように立方対称性は、階層構
造の上段においてしばしば実現される対称性としても良く知られている。他方、界面活性
剤水溶液、ジブロック共重合体、高分子混合系においては、Gyroid構造, Diamond構造な
ど、共連結構造を基本とした立方対称性を持つ変調構造や、同じ共連結構造は保持されて
いるが、その規則性が融解したSponge構造といったものが普遍的に現れ、古くから研究さ
れている。
【変調相の成因】 ソフトマターでは、立方対称性の起源として(層)平面のガウス曲率
弾性が主要な役割を担っていると理解されている。液晶相では、さらに配向秩序が存在す
るため、層秩序と配向秩序の結合も重要な役割を担うと考えられる。例えば「曲げ」と
「捩れ」変形は結合してTB相を発現するが、ブルー相やキュービック祖との関係が興味深
い。
【変調構造の応用】立方対称性を持つ物質では、屈折率・誘電率などの2階のテンソル量
は、必然的に液体状態と同じ対称性を示すため、しばしば「光学等方性」を呈すると言わ
れるが、液体の球形な等方状態とは異なり、空間規則性を持つ構造である。さらに、共連
結構造の空間連結性は、いわゆる多孔質媒質として、高い物質透過性や内部界面による吸
着現象と合わせて、浸透やろ過の媒体、あるいは特異な弾性体としても非常に魅力的な物
質である。
プログラム:
14:00-14:05 ご挨拶 長谷川龍一(三菱ケミカル)
14:05-14:15 企画にあたり 山本潤(京都大学)
14:15-15:00 N-SmC相転移に見られる周期構造(トランジションバー)石川 謙(東京工業大学)
15:00-15:45 棒状分子と界面の複合系の秩序形成 川勝年洋(東北大学)
15:45-15:55 休憩
15:55-16:40 多成分脂質二重膜のゆらぎと構造 好村滋行(首都大学東京)
16:40-17:25 分子を非対称空間群に配列するための空孔材料 石田康博(理化学研究所)
17:45- 懇親会
アブストラクト
N-SmC相転移に見られる周期構造(トランジションバー)
東京工業大学物質理工学院 石川 謙
アルコキシベンゼン誘導体は2量体で液晶相となり、ネマチック(N)相からスメクチック
C(SmC)相への転移過程でtransition barと呼ばれる周期的縞構造を形成することが知られ
ている。この現象は1970年代には知られており、他のN-SmC転移においても発生することが
ある。しかし、知る限りでは原因は解明されていない。近年になり、アルキル鎖の長い同
族体では、2次元ハニカム構造が出現することも報告されている。
我々は垂直/水平配向セルで相転移過程を観察したところ、下図のように、垂直配向セルで
は従来報告されていたTransition bar構造が出現するのに対し、水平配向セルでは、配向
方向に伸びる針状の捩れドメインが生成することを見いだした。この観察結果は、
transition barがこの種の分子に固有の捩れに関係することを示唆している。
アルコキシベンゼンのベンゼン環をニトロ基のついたビフェニル環にした化合物は、
キュービック相を形成する。当日はtransition bar に見られる、1,2次元構造と、キュー
ビック相の3次元構造の関連についても言及する。
棒状分子と界面の複合系の秩序形成
奥島駿(高崎量子応用研究所)、〇川勝年洋(東北大理)
棒状分子の凝縮系に現れる液晶相や棒状のフィラー粒子の分散した系に見られるフィラー
のバンドル形成など、棒状粒子系の示す配向秩序状態の物性は、光特性、電気伝導特性な
どの種々の分野で興味を持たれている。系に界面を導入することにより、この棒状粒子の
配向秩序を制御することができる。ラビングされた固体界面における棒状分子の配向制御
はアンカリングと呼ばれるが、このアンカリングにおいて界面の変形自由度を考慮するこ
とで、変形可能なソフトな界面と棒状分子との相互作用により新しい構造および界面特性
が現れることを理論とシミュレーションにより示す。
参考文献:S.Okushima and T.Kawakatsu, Phys. Rev. E, 96 (2017) 052704.
多成分脂質二重膜のゆらぎと構造 好村滋行(首都大学東京)
我々は二種類の脂質からなる二重膜を「曲げ弾性をもった二成分流体」としてモデル化
し、その動的挙動を調べた[1]。膜外部の流体力学方程式と膜自身の流体力学方程式を連立
させて解くことにより、膜の運動の緩和率を導出した。膜は曲げ弾性を持つとし、膜間で
は摩擦が生じると考える。
また、膜の曲げによって脂質密度が平均の値からずれること(脂質密度と膜の曲げのカッ
プリング)も考慮した。加えて我々は、二成分系に拡張するにあたり、膜内や膜間での脂
質の相互作用の効果を導入した。計算の結果、五つの緩和モードを得た。そのうちの三つ
は、膜の曲げと結合した緩和モードであり、残りの二つは曲げとは結合しない。二成分に
拡張したことによって、以前に得られていた緩和モードに加えて、新たに相互拡散に起因
する二つの新たな緩和モードが現れる。特に、相分離臨界点近くにおいてはこれらのモー
ドが他のモードに比べてはるかに遅い緩和モードとなることがわかった。
[1] R. Okamoto, Y. Kanemori, S. Komura, and J.-B. Fournier, Eur. Phys. J. E 39, 52 (21pp) (2016).
分子を非対称空間群に配列するための空孔材料
石田 康博(理化学研究所 創発物性科学研究センター)
ゼオライトに代表される、規則配列した空孔を持つ材料は、分子を貯蔵・配列・分離・変
換する極めて有用なツールであり、ガス吸蔵材・ガスフィルター、固体触媒などに利用さ
れている。もし、非対称形状の空孔を大面積で配向できれば、そこに内包した機能性分子
は非線形物理現象を発現することが予測されており、この種の現象を探求する格好の素材
となるはずである。今回、非対称構造の液晶を磁場により配向した後に、重合反応で構造
を固定することにより、上記を完全に満たした多孔性材料の開発に初めて成功した。この
材料に適切な色素を導入したところ、顕著な非線形光学効果を発現した。
尚、図を含んだアブストラクトは以下のホームページを参照ください。
https://jlcs.jp/forum/soft/soft_20180310.pdf
以上
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JLCS-Information https://jlcs.jp/information/jlcs-information
発信者:長谷川龍一